2018年 マウイ島 滞在日記 1

 

一日目 (2018年八月十六日・木曜日)

1 いざ成田へ

孫と私は大きいスーツケースと大きいリュックサックを背負って出発した。私はタクシーを呼び「四谷」から「バスタ新宿」へと、成田空港行きのリムジンバスに乗るために出かけた。

成田行きのバスのチケットを買おうとすると、窓口のおじさんが私の顔を見て、老人割引価格があると言い、一緒に行く人も何歳かと聞くので十九歳と答えると、学生割引があると教えてくれた。おかげで思いがけず二人で六千円のところを四千円で行くことが出来た。

二時間半ほど乗って、成田に着いた。デルタ航空の出発カウンターは四階。バスを降りて、建物に入り、私はそこに立っている航空会社の案内嬢に

「四階はどうやって行けばいいのですか?」と聞いた。

「ここが四階です」と案内嬢は答えた。

私は少し恥ずかしかった。バスは一階に着くものと思っている。田舎者だ。

ロビーは閑散としていた。人の姿もまばらである。よくテレビで見るような、人で溢れた空港ではない。寂しいぐらいだ。夜九時出発という便だから、こんなに寂しいのだろうか。

ともかく、送っていた私のスーツケースを受け取り、前もって頼んでいたWiFiの器械を受け取り、出国ロビーに下りて行った。

出国手続きは、機械化、コンピューター化されている。私は孫のやるのを見よう見まねで訳も分からずにやり終えた。

 

2 飛行機の中で

 娘がHⅠSで購入てくれたチケットは、通路側でなくて、通路側に他人が一人いて、その奥二席が私たちの席となっていた。80歳にもなると、夜中に毎晩二、三回トイレに行く。それが苦になっていた。また、エコノミー症候群というのも、怖いと思っていた。出来れば、機内を歩き回ろうと思っていた。しかし、横に一人他人がいると、そう度々退いてもらうわけにはいかない。気の小さい私はそんなことも苦になった。隣の人は、年の頃三十五、六のOL風の女性だった。私は、あまり初対面の人に愛想よくない。自分から話しかけたりしない。しかし隣の人はいい人のようだ。私がテレビの操作に困っていると、ひゅっと手を出して画面を押してくれた。「ありがとう、わからなくて」と頭を下げたけれど、そこで話はお終い。大阪のおばちゃん風に、そこでいい気になってべらべらしゃべっては迷惑だと思って、にっこりしただけで終わった。孫はずっと映画を見っ放しだ。英語が分かるのでいい。私は英語が分からないので、ちんぷんかんぷん。見るのをやめていた。

 私は隣のレデイがトイレに立ったら、自分はしたくなくてもすぐ後ろについて立ち上がってトイレに行った。そうやって何とか夜をやり過ごした。

 

  3 ホノルル着

 機内で朝食もすませ、少し疲れていたが、無事にホノルルに着いた。成田を十六日の夜九時に出発したが、ハワイに着くと、同じ十六日の朝九時だった。イミグレーション審査を受け、税関でチェックを受け、スーツケースも受け取り、ホノルル空港の外に出た。

           


続いてマウイ島に飛ぶので、一旦外に出て、目と鼻の先のハワイアン航空の出発ロビーに行った。ハワイアン航空のロビーは人でごった返している。ここではアメリカ人が多い。東洋人もいるが、日本人でなく、韓国人か中国人らしい。ここに来ると日本語は殆ど通じない。

私は英語が全くしゃべれないので、孫に手続きのことは全部聞いてもらった。航空券は、ネットで取ってA4の紙に印刷したもので、こんなペラペラなもので、チケットとして通用するのかと、私のような古い人間は疑ったのだが、それを提示すると、アロハシャツの制服を着た太った女性が、コンピューターを調べてみ、なかなかいい返事をしてくれない。私は心の中で焦った。そのチケットが駄目ならどうしようと。女性はしばらくコンピューターをいじり回していたが、あきらめて閉じ、孫に何か言ったかと思うと、出口の方に向かって歩き始めた。私は何が何やらさっぱりわからなかったが、仕方なく孫の後ろについて、大きいスーツケースをゴロゴロ押して歩いて行った。

すると女性は、一旦建物を出、同じ建物の別の入り口から一階に下り、そこにいるカウンターの女性と、何かを話していた。そこの女性はうなずき、コンピューターを調べ始めた。そのコンピューターには登録が出来ていたらしく、OKとなったようだ。私はほっと胸をなでおろした。

 

 4 記憶の誤差

私は、以前に娘の結婚式でハワイに来たことがある。約二十五年前である。その時には、ホノルル空港を出ると、何もない広い空間、整備されていない広場みたいなものがあって、そこで、プルメリアの花のレイをかけてもらった記憶がある。いかにも牧歌的な空港であった。

ところがその記憶は夢だったのか、今度降り立ってみると、そこはせせこましい石畳とコンクリートで覆われていて、そのすぐ先がハワイ航空国内線の乗り場だった。

私は少々がっかりした。記憶と違うと思った。しかしその記憶が正しいとは言い切れない。夢物語だったのかもしれない。

私は何か不満のまま、ハワイアン航空の建物の二階の通路から、ハワイへ到着して第一番目の写真を撮った。

       


高いヤシの木が生えていて、頭上には真っ青な空が広がり、彼方の山の上には白い雲が連なっている。眼下には舗装された道があり、車が走っている。近代化された南洋の島という風景だった。

 

5 麻薬犬

諸々の手続きを済ませて、搭乗ロビーに入ろうとすると、長蛇の列が出来ていた。その列の間を一匹の茶色い犬がウロウロ、ウロウロしている。何だろうと思うとそれは麻薬の匂いをかぎ分ける犬だった。私にとっては初めての体験だった。もしやその犬が何かの匂いを麻薬と勘違いして、自分の前で止まったりすることはないのだろうかと、気になったりした。

 

6 乗り遅れた父親

父親は仕事の関係で、関空から、私たちより少し遅れてホノルルに着くことになっていた。私と孫は先に「マウイ島・カフルイ空港行き」の搭乗口に移動して、父親の来るのを待っていた。

出発時間が迫って来ても、父親はなかなか来ない。孫と父親は携帯で連絡を取り合っている。孫の言う事には、父はホノルルに着いているが、入国手続きや、カフルイ行きの搭乗手続きで時間がかかって、なかなかこちらに来れないということだ。

父親は、マウイ行きの飛行機の出発時間が迫っていると説明し、先に手続き出来るように計らってほしいと言ったそうだが、駄目だといって受け付けてくれないらしい。

ついに父親は一便遅れることになってしまった。

ホノルルからマウイ行きの飛行機は三十分おきに飛んでいる。マウイ島内の乗り合いバスより回数が多い。だから、そんなに焦るなよ、ということなのかもしれない。

私と孫は予定通りに先に飛んだ。

         


カフルイ空港では、貝殻のレイで出迎えてくれた。ホノルルのプルメリアの花のレイと比べたら随分地味だと、私はがっかりする。

 

 

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