愛犬ジェシーは死んだ
去年(2021年)の10月、12歳のジェシーは死んでしまいました。
メス犬でした。
トイプードル。
可愛かったなあ。
もう一度ジェシーに会いたいよ。
でももう会えないんだ。死んでしまったのだもの。
ジェシーは利口な犬だっだ。「かみなり」という言葉を覚えたのだった。
杉並区吉祥寺の善福寺公園を散歩していたら、雷がごろごろと来たのだった。
犬は「かみなり」が大嫌い。私は急いで犬用の乳母車にジェシーを乗せて、
家に帰った。
帰る道中、ずっと、「かみなり、かみなり、こわいねえ。かみなり、こわいねえ」と言い続けていたら、ジェシーはかみなりといういう言葉を覚えたのだった。
家族の会話で何気なく「かみなり」という言葉が出た時、怖そうな顔をして、こちらをみて、ジェシーはしっぽを落として、すごすごと二階に上がっていったのだった。そしてベッドの下に隠れた。雷も何も鳴ってないのに。
「あれ、ジェシー、かみなりということばが分かるんだわ」
その話を孫にしたら、嘘だろうと言って、試すように「かみなり」と言った。
すると、恨めしそうな顔をして、ジェシーは尻尾を落として、二階に行こうとする。
「ほらね。わかるのよ。我が家では、『かみなり』という言葉は禁句よ。禁句。禁句。ジェシーが可哀そうだもの」
それでも時々面白がって、わざと「かみなり」と言ったりする。すると家じゅうが、「しーっ、禁句禁句」と唇に指をたてて、笑う。
10歳を過ぎてジェシーは「かみなり」という言葉を覚えた。利口な犬だった。
想い出はいっぱい。家族で車で出かけようとすると、自分も一緒に行きたくて、玄関のドアが開くといち早く自分が道に飛び出していくのだった。危ないので「ジェシー、ダメダメ」というと、車の下に潜り込む。これも危ない。仕方なく呼び出して一緒に載せていくのだった。
もう一度抱っこしたい。でももうそれはかなわない。
今はロシアがウクライナに攻め込んでいる。犬の想い出にばかり浸っている時ではない。
人類が営々として築き上げてきた文明を、瓦礫と化す。平和に暮らしていた市民や子供を殺す。何のために。隣国は隣国の方法で生きていけばいいのだ。愚かで悲しい。
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